教授ご挨拶
当教室は1964年に診療科として設置され、1971年 に正式に麻酔科学講座(上山英明初代教授)として開講した伝統ある教室です。私は、2014年4月より第4代目教授として教室運営しております。
麻酔は手術による痛みを克服するために生まれた技術であり、消毒法とともに手術医療の進歩を支えてきました。そして、麻酔は、痛みを克服するだけではなく、手術に伴うあらゆる侵襲から患者を守る”侵襲制御医学“として発展してきました。近年、重度の合併症を有するハイリスク手術症例の増加とともに、ロボット手術など高度な医療技術による手術が行われております。これらの症例を安全に管理するために、周術期医療における麻酔科医の役割は益々重要になっております。さらに麻酔に必要な技術を応用して術後鎮痛、ペインクリニック、緩和ケア、無痛分娩、集中治療、在宅医療へと展開し、麻酔科が活躍する領域は手術室から外へどんどん広がっています。
麻酔科の業務のほとんどが他診療科とのチーム医療です。全身管理と疼痛管理で手術治療、分娩、がん治療、重症患者治療の質を上げる、すなわち、病院の医療の質を上げるのが麻酔科医の役割です。

教授:川股 知之
Q1. どんな麻酔科医を育成しますか?
A1. 自分の大切な人が手術を受ける時に、安心して任せられる麻酔科医 ───
そんな麻酔科医の育成を目指しています。そのために必要な要素は、次の3つです。
- Practice(実践力)
- Scientific thinking(科学的思考)
- Patient-centered(患者中心の姿勢)
まず、周術期をしっかりと支えるためには、確かな知識と技術に裏打ちされた実践力(Practice)が不可欠です。また、周術期の生体反応は患者ごとに異なります。目の前の患者に起こっている病態や反応を、勘や経験だけに頼らず、科学的に理解し、理にかなった対応ができる力(Scientific thinking)が求められます。Practiceを高めるためには、日々の教育と訓練が重要です。Scientific thinking を磨くためには、研究や論文作製の経験を通じて、科学的な思考を構築するトレーニングが必要です。私たちは、Practice と Scientific thinking の両方を高いレベルで備えた、プロフェッショナルな麻酔科医の育成を目指します。
また、「良き医師は病気を治療し、最良の医師は病気を持つ患者を治療する」という言葉があります。患者さんは、病気や手術に対して、さまざまな不安・悩みを抱えています。そのため、真に患者を支えるには、知識・技術だけでなく、“寄り添う心”と“思いやり”を持った豊かな人間性(Patient-centered)が必要です。
Q2. 研究は必要ですか?
A2. 最高の技術・知識・科学的思考を持っていても、救えない命や治らない疾患・症状が存在します。最先端の知識・技術の習得は、先人の築き上げた歴史を学ぶことであり、現時点で何がわかっているかを学ぶことです。救えない命や治らない疾患・症状を克服するためには、先人の築き上げた歴史に新たなページを加えていく必要があります。これは研究によって成し遂げられます。私たちの教室では、痛み・循環などをテーマとしてに研究に取り組み新たな医療の開発を目指すとともに、研究を通して Scientific thinking ができる麻酔科医を育成を目指します。
Q3. どんな教室作りをしていますか?
A3. 教室員それぞれの特徴を活かして全員が活躍できる教室作りです。研究が得意な人もいれば、研究はあまり得意ではないけれども臨床が優れている人もいれば、コミュニケーション能力に長けた人など、教室は多様・多才な人々の集まりです。それぞれの特徴を活かして全員が活躍する明るく活気のある教室、そして、時代に適応できるレジリエントな教室作りを目指しています。
和歌山は海と山に囲まれ、アウトドア、マリンスポーツが盛んです。豊かな自然の中で、仕事も生活も大切にし、じっくりと臨床・研究に取り組むことができます。そして、和歌山は華岡青洲により世界で初めて全身麻酔が行われた地です。全身麻酔発祥の地、和歌山で、私たちと一緒にプロフェッショナルな麻酔科医をめざしませんか?