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がんの痛みはがまんしないで

多くの人々が「がんの痛み」をがまんしています

Q基本的にがんの痛みはがまんするものだと思いますか?
Q基本的にがんの痛みはがまんするものだと思いますか?

いま、がんの60%は治る時代といわれています。にもかかわらず、現在でもがんが怖い病気と思われている理由の一つが、一日中続く激しい痛みです。しかし、日本では“がんそのものに対する治療”に比べ、“がんの痛みに対する治療”はそれほど注目されていませんでした。

多くの患者さんは、長い間、痛みに対してがまんし、それが当然と思ってきたのです。
2006年に実施したアンケートでは、多くの患者さんが「がんの痛み」はがまんするものと考えていました。

痛みの伝え方

がんの痛みはとることができます

医療スタッフや家族など、周りの人が痛みを正しく理解するために、がんの痛みの程度をうまく伝えられるようにしましょう。痛みの情報は、医療スタッフが痛みの原因や病気の状態などをさぐるきっかけになります。
痛みの場所は、「ここが痛い」とはっきりとしていることもあれば、ぼんやりとしていることもあります。痛み方(ズキズキ、キリキリなど)も、患者さんによって様々です。痛みがあらわれたら、次のようなことを医療スタッフや家族に伝えてください。痛みの情報を把握することにより、がんの痛みはとることができます。

痛みを感じはじめたとき:
「○時頃から・○日前から・○週間前から・長時間歩いたあとから・重いものを持ったときから・転んだときから など」
痛みの場所:
「おなかが・腰が・背中が・太もものあたりが など」
痛みが強くなるとき:
「動いたとき・長時間すわったとき・寝返りを打ったとき・呼吸をするとき・触れたとき・いつでも など」
痛みがらくになるとき:
「じっとしているとき・横になっているとき・座っているとき・おフロに入っているとき など」
痛みの性質:
「うずく・刺すように・しめつけるように・だるい・しびれる・冷たい/熱い など」
「ズキズキ・キリキリ・チクチク・ピリピリ・ヒリヒリ など」
痛みのつよさ:
数値や言葉などであらわす方法があります。
右のようなスケールを使うこともあります。
痛みによる影響:
「眠れない・食欲が出ない・動けない・不安になる・イライラする など」
痛み止めの効果:
「よく効いている・少し効いている・途中で効き目が切れる・だんだん効かなくなってきているようだ・効かない(痛みの強さは変わらない)など」
痛み止めの副作用など:
「吐き気がした・便秘・眠気・胃の痛み など」

がんの痛みの治療を受ける前には、痛みの状態をなるべく正確に伝え、治療内容をよく聞いてから受けるか受けないかを決めてください。治療中・治療後も、常に医師や医療スタッフと話し合って、痛みがどう変化したのかを伝え、わからない点は納得できるまで説明してもらいましょう。

WHO(世界保健機関)方式がん疼痛治療法

「がんの痛み治療」がはじまっています。

1986年に発表された「WHO方式がん疼痛治療法」は、「がんの痛み治療」として世界中から実践され、多くの患者さんを痛みから解放することに貢献しました。

がん患者に対する痛み治療のあり方

この治療法が提唱される以前の考え方は、がんそのものの治療が効果をあげなくなった末期に「痛みの治療」を行うものでしたが、WHOは、がんと診断されたそのときから、がんそのものの治療と並行して、必要に応じた痛みの治療を行うよう提唱しています。

段階的に進める、痛みの治療目標

「WHO方式がん疼痛治療法」で示された治療法の基本は、モルヒネやオキシコドンなど医療用麻薬の飲み薬を十分量適切に使うこと。がんの痛み治療は下記のように段階的な達成を目指して治療を進めていきます。

  1. まず、夜間ぐっすり眠れるようになる
  2. 静かにしていれば痛くないようになる
  3. 歩いたり、からだを動かしても痛くならない

医療用麻薬のはなし

適切に使用すれば、医療用麻薬は安全で効果的です。

激しい痛みの治療には、効き目が強い医療用麻薬の使用が必要です。
麻薬と聞くと不安に思う方もいらっしゃるでしょうが、痛みのある人に医師が適切に使用する医療用麻薬は、安全で効果的です。
アルコールに対して強い人、弱い人がいるように、鎮痛のための医療用麻薬の十分量にも個人差があります。
たとえ飲む量が増えたとしても、それによって中毒を起こしたりすることはありません。

医療用麻薬について、正しい知識を持ちましょう。

日本で「がんの痛み治療」の普及が遅れているのは、医療用麻薬に対する誤解や偏見があるためでした。
しかし、痛みのある人が適切に使用すれば「中毒になる」「死期を早めてしまう」ということはありません。
医療用麻薬について正しい知識を持って、医師の指導のもとで正しく使用しましょう。
なお、痛みのない人が使用したり、医師の指導と違った方法で使用すると中毒になることがあるので、絶対にほかの人にあげたりしないでください。

がんの痛み治療に関する、わが国の現状

日本の「がんの痛み治療」が遅れている現状を映す指標として、先進国の人口あたりの医療用麻薬消費量の比較があります。日本の消費量は世界的にみても著しく低く、アメリカのわずか19分の1程度というのが現状です。

痛みからの解放がもたらすもの

がんの痛みをとることで、もっとも大切なのは、患者さんが痛みを忘れて安心して過ごせるということなのです。
たとえ治療中でも、旅行や外出など、今までどおりの生活をおくることができます。
前向きに「がんそのものの治療」に取り組み、見事に病気を克服された方もいらっしゃいます。